本日の日経新聞、シリーズ記事「コロナ第6波出口への課題」より。
東大の玄田教授の記事、若手社員の育成影響懸念、という論。
それ自体はさらっと。
で、この記事の中で取り上げられている、アルバート・ハーシュマンという20世紀ドイツの政治経済学者の「離脱と発言」について、少々興味が湧いたので調べてみました。
ハシューマンさん曰く、組織に所属する個人が、自身が直面するネガティブな問題に対し”個人の側としてが取れる解決行動”は、次の通りの2類である、と言っています。
1.「離脱(Exit)」:文字通り、組織のメンバーをやめること。
2.「発言(Voice)」:組織に対して声をあげて、組織を内部から変えていくこと。
そしてこの2つは、忠誠(Loyalty)によってさまざまな形態を取りうる、と。
国家間の交渉から、商品製造者と顧客の関係、血縁関係と、社会行動全般に適用できる概念として提唱されたこの“Exit・Voice”理論は、現在、労働分野でも一般的な概念だそうです。
ちなみに、問題を無視するとか、沈黙するとか、は解決の行動ではなく、問題との共存。問題先送り。
問題に屈服、つまりいやいや従うとか?というのも、形を変えた問題との共存であり、まぁ従えるのだから問題自体の消滅、とも言えるかもしれません。
さて、それを踏まえて以下図表を見てください。
これはリクルートワークス研究所の「“Voice”と“Exit”に関する5カ国比較」で紹介されている、データ(抜粋)ですが、これによると、日本では現在の働き方について5つの項目すべてにおいて、満足度が低い状況。
うーん、ちょっと寂しい。涙
で、これ、単純にハーシュマンの理論に従うと、日本では、自身の働き方”個人の側としてが取れる解決行動”である、「離脱(Exit)」=つまりは転職、または「発言(Voice)」の行動が起きている可能性が高い、ということですよね。
一方、これも併せて見てください。
同じく5カ国リレーション調査で、日本の「離脱(Exit)」=転職についてみてみると、なんと日本は1社しか勤めたことのない人の割合が約40%と、5カ国の中では断トツで高い数値となっています。
アメリカの倍、フランスの4倍。
つまり、日本は自身の働き方に関わる問題に際して、「離脱(Exit)」=つまりは転職、というオプションがあまり取られていない、ということ。
もちろん、これが労働者と個人の相性が良く、お互いが満足している結果、転職が少ないならば、それは良いことです。
ただ、先の図表①、この図表②と合わせて考えると、、、単純に”私は満足しているから転職しないんだ”、とはどうしても結論付けられませんよね。
日本人は仕事に不満が強い傾向にある。
でも「離脱(Exit)」=転職はせずに、会社に残り続ける。
では、その分もう一つのオプション、「発言(Voice)」がガンガンあがっているのでしょうか?
そうではない、、、のだとしたら?
次記事で、もう少し考えてみたいと思います。
(株)アズワン_小林