前号で、住宅ローンの金額は、「年収の20%」くらいまで、というのが私の個人的な持論、というお話をしました。
もちろん、それが正しいかどうかは、個々人それぞれです。
ただ少なくとも、住宅ローンの支払い額を、“年収のX%”と最初に決めれば、購入できる物件の価格が自動的に決まります。
仮に、「年収の20%」理論で考えてみましょう。
とあるかたの年収が500万円であれば、住宅ローンの支払いは、500万円×20%ですから、年間100万円。
毎月では8万3,000円、ということになります。
35年の住宅ローンの金利が1%だとすると、だいたい3,000万円の物件になるでしょうか。
さらに頭金を用意できる人は、その額をプラスする。
たとえば、頭金300万円が調達できたとすれば、価格3,300万円の物件を探せることになります。
ただ、ほとんどの人は、この大切な物件の価格のバーを決める前に、物件を先に見に行ってしまいます。
実際に見ると、毎日見飽きた中古のわが家とは打って変わった最新の設備や仕様を纏った素敵な住まいが、そこにあります。
タワーマンションともなると眺望や舞い上がってしまったりして。
そして、現地には、かならず販売員や不動産エージェントが立っていて、こういいます。
「ためしに35年の住宅ローンを組んだら、毎月の返済がいくらになるか、調べてみましょうか?」
そうすれば、お客様が飛びつくことを知っているから。
「年収はおいくらですか? 」のジャブからはじまり、
「奥様も働いていますよね?」とロープに詰め寄られ、
「大丈夫、ローンは通りますよ。」と綺麗にパンチが入ります。
ましてや、賃貸住まいのお客様ともなれば、
「今のお家賃とあまり変わらないですね。」
なーんて、例の必殺のボディブローを言われてしまえば、もうクリンチして逃げるしかありません。笑
しかし、前回書いた通り、本来「お金を借りることができる」と、「お金を返すことができる」は、まったく違います。
不思議なもので、「借りられる」金額を聞くと、自分はその額を「返せるんだ」と勘違いしがちです。
これはとても危険です。
10kgのお米を持ち上げることと、それを持ち10km歩くこととは、違いますよね。
物件の魅力や、不動産業者の甘~い試算に酔う前に、確認しましょう。
自分の身の丈以上の物件を、無理な試算=「借りられる」金額、に基づいて購入していないか?
「返せる」との判断をするにあたって、「ボーナス払い」という麻薬成分に侵されてはいないか?
、、、と確認する必要はありそうです。
ちなみに夫婦2人の共稼ぎだと、不動産業者は、2人の収入を合算してローンを組むことをすすめてきます。
でも、子どもが生まれて、もし奥さんが仕事をやめれば、奥さんの収入はゼロ。
そんな時に頼りになるのが、「ボーナス」だったりするはずですが、そこをはき出してしまっていると、結局、返せなくなってカードローンを借りたりして。
その支払いを、また別のカードローンから借りて、それを、、、なんて悪循環に落ち込んで、最終的に、前回記事のように破綻し、物件を手放さざるを得なくなった人も、実は少なくありません。
「返すことができる」範囲の住宅ローンで、無理のない返済をするためには、まず「ボーナス払い」は前提から外してみましょう、というお話。
特に、いわゆる中間層年収で、ボーナス比率の大きい給与設計になっているサラリーマンの方は、要注意ですよ。
(株)アズワン_小林