なんたって、「中古の高級マンション市場」のプレーヤーといえば、1985年の三井不動産リアルティ(当時の三井不動産販売)さんが創設した「リアルプラン」が先駆けですよね。
単純な億ション仲介の枠を超え、高級富裕層向けに不動産売買や運用のコンサルティングを手がけ、現在は麻布や青山、銀座など都心部に5店舗を展開する、まさに業界の雄、です。
<公式Web>
2017年には、東急リバブルが都心マンション仲介に特化した店舗「グランタクト」を、港区六本木などに構えました。
<公式Web>
https://www.livable.co.jp/grantact/
2019年には住友不動産も、やはり高級マンション専門の仲介店舗「マンションプラザ」を麻布や新宿、日本橋などに開設した。
<公式Web>
https://www.stepon.co.jp/mansionplaza/
各社の取扱物件は、当然1億円超のものが目立ちます。
港区の某タワーマンション高層住戸からの眺望。
億ションあたりまえ、で3億ションなら、東京タワービューを独り占め!
“人生で最も高い買い物”の住宅は、一般価格帯の顧客においては売買する機会が少なく、それは仲介会社にとっても1度きりの取引。
翻って、高級マンションの買い手である富裕層は、住み替えや相続などで定期的に売買を行います。
別荘や投資用などでマンションを複数保有している場合もあります。
密な関係性=信頼を築ければ、当該マンションのリピート取引は勿論、他資産や紹介者に売買チャンスが広がる。
つまりは必然的に手数料収入も反復拡大して得られる。
故に、マンション売買エージェント業各社様からすれば、「中古の高級マンション市場」、つまり、富裕層接点チャネル&フィールドは何より大切な、最重要な縄張り、ドメインなのです。
一方で、高級マンションの取引増加を支える要因は、富裕層の活発な購買意欲だけではなさそうです。
前号で紹介したレインズ(東日本不動産流通機構)のデータでは、2021年8月に都心3区で取引された中古マンションの平均価格が7,568万円。
同年3月や6月には8,000万円を超えており、5,000万円台で推移していた2016年と比較して顕著に上昇。
平均価格の押し上げによって、1億円を超える価格で取引される中古マンションが増えています。
つまりこの平均価格上昇の結果、億ションはもはや珍しい存在ではなくなっている、といえるのかもしれません。
顧客も、エージェントも、意識的に物件を「億ション」に絞るというよりも、むしろ都心で中古マンションを売買すると、自然と1億円を超えてしまう、というのが実情なのかもしれません。
こうして増加する億ションに対して、買い手の属性も、旧来型の富裕層に限られないのでしょう。
世帯年収が1000万円や2000万円級の共働き世帯なら、夫婦で住宅ローンを組めば1億~1億5000万円程度のマンションに手が届くのですから。
少子高齢化、団塊世代の”余裕あるリタイア”親族からの資金援助なんかがあれば予算はさらに伸びるわけで。
夫婦のライフプラン、家族構成の変化に応じて、都心で広い⇒高額マンションへの住み替えをいとわない彼らはまた、旧来型の富裕層と共に仲介業者にとって優良顧客となります。
そこへこの円安、コロナで封じられていたインバウンド需要の復活。。。でどうなる?
とにもかくにも、いわゆる「億ション」が閑静な住宅街に立つ豪邸の代名詞だった時代は、今は昔ということですね。
元々一般の中古マンションであったはずの物件が、好立地なら1億円を超える風景。
それは“割安感が売り”だった中古マンション市場の大転換の象徴なのです。
(株)アズワン_小林