孤独死の「手間」の問題。
それは賃借権が相続の対象になる、ということから発生する手間の問題です。
賃貸借契約期間中の借主の孤独死が発生した場合、当該借主の連帯保証人や緊急連絡先が相続人であれば、直ちに契約を終了させることができます。
一方、相続人が不明な場合は法的な手続きが必要となり、契約を終了させるまでに相当な時間がかかることになります。
さらにこの場合、借主≒入居者の残した家財道具等(残置物)も相続の対象になるので、勝手に処分することができません。
相続人に引き取りを求めるか、処分の同意を得る必要もあります。
この残置物の問題についても、国土交通省が2021年6月に、賃貸借契約の解除や残置物の処理を内容とした死後事務委任契約に関する「残置物の処理等に関するモデル契約条項」を定めていますけどね。
このように、賃貸住宅の貸主(大家さん)が高齢者を自らの物件に迎え入れるのあたり、賃貸借契約の段階でリスクを減らすことができる”理屈”は整いつつあります。
しかし、近年のこれらのお上(かみ)の指針は、あくまで高齢者「住宅難民問題」への糸口ではあるものの、あまたの賃貸住宅の貸主(大家さん)の本格的な不安の解消にはまだまだ時間がかかるとおもわれます。
この高齢者「住宅難民問題」については、当事者年代はその実態を認知している一方、多くの現役世代、若者は認知していません。
正直、高齢者の受け入れはリスクが伴う、と思うのは無理はないとおもいます。
ただ、私に言わせれば、それはそのまま自分の問題、直近では自分の親の将来の問題でもあると考えれば、少なくとも「年齢を理由に住まいを選択できないという社会課題」としてもっと認知してもらい、周知されるべきことではないかと思います。
高齢者の住宅難民は、本来は公営住宅がカバーすべきですが、公営住宅の数は決して多くはありません。
国土交通省では、住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅(=セーフティネット住宅)を登録し、「セーフティネット住宅情報提供システム」によって物件を検索できるようにしていますが、これも到底数は十分ではありません。
やはり高齢者「住宅難民問題」への対応、つまりは高齢者の住宅確保策としては、民間=一般の賃貸住宅が活用されることが期待されます。
そこから逃げずに、行政や業界がこれから一層頑張るしかない、というところでしょう。
ちなみに、個人的な防衛策という観点でいえば、住宅を購入して高齢期のリスクに備えるという考え方も生まれます。
困ってから=高齢者住宅難民化してから住宅を購入しようとしても難しい場合も多いでしょうから、住宅ローンを組める若いうちから高齢期の住宅確保を視野に入れて、長期的な計画を立てることも必要かもしれません。
いずれにしても超高齢化社会となる我が国においては、高齢期になって、どこに、どのように住むかは大きな課題です。
ソフトとしての介護の担い手問題はしばしば取り上げられますが、その箱=住宅問題についても、同様に社会全体で改善に向けて本腰を入れて取り組む段階にきている。
私にはそのように思えてなりません。
株式会社アズワン_小林